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死後事務・尊厳死

誰も住まなくなった実家をどう守る?「空き家問題」と成年後見の深い関係【第36回】

高齢者等終身サポート専門行政書士の森です。

前回の「死後事務」に続き、今回も非常にご相談が多いテーマ「空き家」についてお話しします。

総務省の調査では、日本の住宅の約7~8軒に1軒が空き家と言われています。特に、親御さんが施設に入所したり、亡くなったりした後に残される「実家」の扱いは、誰にとっても他人事ではありません。

実家が「空き家」として放置される背景

なぜ、空き家はそのまま放置されてしまうのでしょうか?ネット報道などでも指摘されていますが、大きな要因の一つに「所有者の高齢化と認知症」があります。

不動産を売却したり、解約したり、あるいは大規模な修繕をしたりするには、所有者本人の「確かな意思能力」が必要です。もし、親御さんが認知症などで判断能力を失ってしまうと、たとえ家族であっても勝手に実家を売却したり、管理契約を結んだりすることは法律上できません。その結果、「手をつけることができず、やむを得ず放置される」というケースが後を絶たないのです。

放置された空き家に潜む「無過失責任」のリスク

「誰も住んでいないだけだから、放っておいても大丈夫」と思われるかもしれません。しかし、空き家の放置には大きなリスクが伴います。

・建物の老朽化による倒壊や落雪・落下物

・雑草の繁茂や害虫の発生、悪臭による近隣トラブル

・不法投棄や放火、不法占拠などの治安悪化

特に注意したいのが、法律上の「工作物責任(民法717条)」です。もし建物の管理に不備があり、瓦が落ちて通行人が怪我をしたり、隣家を壊したりした場合、所有者は「過失がなくても」賠償責任を負わなければならないことがあります。「知らなかった」「わざとではない」では済まされない厳しい責任です。

成年後見制度が「空き家」を救う鍵になる

こうしたリスクを回避するために、私たち行政書士が活用を提案するのが「成年後見制度」です。

本人の判断能力が不十分になった後でも、家庭裁判所から選ばれた「成年後見人」がいれば、本人の代わりに不動産の管理や売却を行うことが可能になります。

・適切な管理:後見人が窓口となり、空き家管理業者と契約して、定期的な通風や清掃を行います。

・資産の有効活用・処分:施設入所費用を捻出するために実家を売却する必要がある場合、家庭裁判所の許可(居住用不動産処分許可)を得た上で、後見人が売却手続きを進めます。

・空き家バンクの活用:自治体の空き家バンクへの登録など、次の方へ繋ぐための活動もスムーズになります。

行政書士の想い:家は「家族の歴史」そのもの

「持ち家信仰は高度経済成長期の一過性の現象だった」という厳しい意見もあります。しかし、私は少し違う見方もしています。家は単なる「建物」ではなく、そこで過ごした家族の思い出や歴史が詰まった大切な場所です。

だからこそ、空き家が「地域の荷物」になってしまう前に、そして親御さんが元気なうちに、どうしていくべきかを話し合うことが大切です。

・将来、誰が管理するのか?

・判断能力が低下した時に備えて、任意後見契約を結んでおくか?

・もしもの時は売却して、介護費用に充てるのか?

こうした「家の出口戦略」を一緒に考えるのも、私たち行政書士の役割です。

まとめ:早めの相談が、家族と地域を守ります

「空き家」の問題は、時間が経てば経つほど、建物の傷みや権利関係の複雑化が進み、解決が難しくなります。

「実家をどうしよう…」と少しでも頭をよぎったら、それが相談のタイミングです。当事務所では、成年後見の仕組みを使いながら、大切な資産をどう守り、どう次へ繋げるかを、法的な観点からアドバイスさせていただきます。

お一人で抱え込まず、まずは気軽にお茶を飲むような感覚でご相談ください。

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