高齢者等終身サポート専門行政書士の森です。
日頃、地域福祉の最前線で高齢者や障害者の方々を支えていらっしゃるケアマネジャーの皆様、本当にお疲れ様です。
日々の関わりの中で、「この利用者様に成年後見制度を勧めるべきか?」「制度を使うと何が変わるのか?」と悩まれる場面は少なくないかと思います。
先般、地域のケアマネジャーの皆様から、成年後見制度に関するリアルな疑問やご質問を15個お預かりしました。
今回は、そのアンケート結果をもとに、ケアマネジャー様が現場で今すぐ使える「成年後見の一問一答」として、分かりやすく解説します。
■ そもそも後見人って何をしてくれるの?「できること・できないこと」
現場で最も多く聞かれるのが、「後見人はどこまで動いてくれるのか」という実務の範囲です。後見人の仕事の柱は、「財産管理(金銭管理や支払い)」と、医療や介護の契約を担う「身上保護」の2つです。
できること:年金等の管理、施設・介護契約、入院手続き、生活費の支払いなど。
できないこと:お買い物や身体介護といった「実際の介護(事実行為)」、事前の生前贈与、医療行為(手術など)への同意、身元保証人になること。
これらは法律で厳格に定められています。もし亡くなった後の葬儀や未払金の精算が心配な場合は、法改正により一定の緊急事務が可能になりましたが、元気なうちに「死後事務委任契約」を別で結んでおく方がより確実でスムーズです。
■ 2つの後見制度「任意後見」と「法定後見」の違い
成年後見制度には、大きく分けて「任意後見」と「法定後見」の2種類があります。
任意後見(元気なうちの備え)
本人の判断能力が十分あるうちに、信頼できる将来の後見人と「受けたい支援内容」を公証役場で事前に決めておく契約制度です。本人のライフプランを色濃く反映できるのが特徴です。なお、契約しただけでは報酬は発生せず、将来判断能力が低下した後に「任意後見監督人」が選任されて初めて発効します。
法定後見(認知症などが進行した後の対応)
すでに判断能力が低下した後に、家庭裁判所へ申し立てる制度です。裁判所が後見人を決めるため、親族以外の見知らぬ専門職(弁護士・司法書士など)が選任されるケースも多くあります。
「政府が補助のみにする法改正を検討しているから、待った方がいい?」というご質問もありましたが、実際の運用開始には数年かかる可能性があります。今まさに困っている利用者様がいる場合は、生活破綻を防ぐためにも、現行制度での早期利用を勧めるべきです。
■ 利用者様やご家族への上手な「伝え方」と「費用の目安」
「自由を奪われる気がする」と拒絶反応を示す利用者様への伝え方に悩むケアマネジャー様は多いものです。
そんな時は、「自由を奪うもの」ではなく、「これからの契約やお金を、信頼できる国や専門家と一緒に守る安心の仕組みです(財産を守るガードマンや家庭教師のようなもの)」とポジティブに伝えてみてください。
気になる費用面は以下の通りです。
初期費用:実費数千円〜十数万円(申立費用または公正証書作成費用)。
月額報酬:法定・任意ともに、本人の財産状況や業務内容に応じて裁判所や契約で決定(相場は月額2万〜6万円程度)。
「身寄りがない生活保護受給者」の方でも、地域包括支援センター等を通じて市町村長申し立てにつなげ、自治体の「成年後見制度利用支援事業」を活用すれば、本人負担を実質ゼロにできる場合があります(大阪市にも助成制度があります)。
■ 知っておきたいトラブル防止策:「解任」や「家族がなる場合」
後見人が選任された後に、「馬が合わないから解任したい」という要望をいただくことがあります。しかし、残念ながら「馬が合わない」という理由だけでは解任できません。不正や著しい怠慢がある場合のみ、裁判所が解任します。不満がある場合は、家庭裁判所に事実を相談しましょう。
また、家族が後見人になる場合も、裁判所に申し立てて認められれば本人の財産から報酬を受け取れます。ただし、家族であっても一度引き受けると「本人が亡くなるまで」原則として途中で辞めることはできません(病気などの正当な理由と裁判所の許可が必要です)。非常に責任が重い制度であることを、事前にご家族に知っていただくことが大切です。
■ まとめ:ケアマネジャー様の負担を減らす「チーム医療・介護」へ成年後見の手続きや親族間の調整を、ケアマネジャー様が一人で抱え込む必要はありません。
初期段階から地域包括支援センター、中核機関、そして私たちのような終活・後見を専門とする専門家を巻き込み、「財産管理・契約・死後事務」を専門職に切り離していくことが、ケアマネジャー様の最大の負担軽減につながります。
当事務所では、ケアマネジャー様からの実務的なご相談や、利用者様への同行訪問も喜んで承っております。
現場で「困ったな」と思われる事例がございましたら、どうぞお気軽にお声がけください。
※コラムは今回で第50回となりましたが、いったん休止させていただき、近日中に改めて再開させていただきます。